働き方改革の長時間労働の是正って本当にできるのか検証します

働き方改革 わかりやすく解説

長時間労働の是正について解説

長時間労働をするとときには、過労死という形で人の命を奪います。

また心の病気や心臓の病気などを引き起こすこともわかっています。

労働基準監督署は「2017年度1年間に、長時間労働がうたがわれる25,676事業場に対し、監督指導を行っていますが、このうちの70.3%の18,061事業場で労働基準関係法令違反」が見つかっており、長時間労働の是正は難しいことが分かります。

法令違反があった18,061事業場のうち、違法な時間外労働があったのは11,592事業場でした。月80時間を超えるものは、そのうち8,592事業場(74.1%)もありました。
それ以外の違法労働時間数は以下のとおりです。
うち月100時間超:5,960事業場(51.4%)
うち月150時間超:1,355事業場(11.7%)
うち月200時間超:264事業場(2.3%)

働き方改革の中で、時間外労働の上限について、「月45時間、年360時間を原則とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度に設定」等、労働時間に関する制度の見直し(施行:2019年4月、中小企業は2020年4月)がされています。

労働安全衛生法における長時間労働

厚生労働省は、時間外労働や休日労働が月45時間を超えた場合、労働時間が長くなるにつれて健康障害のリスクが高くなるとして、事業主や労働者向けに注意喚起を行っています。特に、時間外・休日労働が月に100時間超、または2~6か月間の平均が月80時間超の場合、脳・心臓疾患の発症と業務との関連が強くなることは医学的に確認されているので注意が必要です。

一方、労働安全衛生法では、長時間労働者の健康保持のために医師による面接指導の実施を使用者の義務としています。実施義務が発生するのは、時間外・休日労働が「月100時間」を超え、かつ、労働者に「疲労の蓄積」が認められ、「本人から申出」があった場合です。

以上のことから、長時間労働とは1か月の時間外や休日労働が100時間を超えた場合、あるいは2~6か月間の月平均が80時間を超えた場合と考えられます。ただし、時間外や休日労働が月45時間を超えると徐々に健康障害のリスクが高まることを考えれば、月80時間より短くても長時間労働と判断されることもあるでしょう。

時間外労働の上限規制

罰則つき時間外労働の上限規制は、働き方改革の目玉とされる法改正です。

時間外労働については現状においても限度時間が定められていますが、この限度時間は、臨時的かつ特別な事情があれば、このあとで説明する36(サブロク)協定に「特別条項」というものを付記することで解除することができるものでした。このことは、以前から長時間労働を助長させる要因になっているとの声もあり、今回の法改正では、36協定(「特別条項」あり)の締結をもっても超えることのできない上限時間が定められるとともに違反した場合には罰則も科されることになりました。

平成31年4月から(中小企業については2020年4月から)の時間外労働の上限規制は次のような整理になります。

【原則】
週40時間を超えて労働ができる時間外労働の上限は、「月45時間、かつ、年360時間」とする。(従来通り)

休日労働の扱いに注意

労働時間を算出する際に注意したいのは、上限規制に法定休日労働の労働時間が含まれるかどうかという点です。「月80時間」や「月100時間」については「休日労働を含んで」とあるのに対し、原則の「月45時間」や特例の「年720時間」には休日労働に関する記載がありません。

ただし、「月45時間」や「年720時間」の労働時間には、法定休日労働は含まれないとする見方が多いです。もし、休日労働は上限規制の対象外であれば、時間外労働は少なくなっても休日労働が増えてしまい、現実には労働時間の短縮につながらないのではないかと危惧されています。

「過労死ライン」とは

「過労死ライン」は、法律などで定義されたものではありません。しかし、長時間労働の定義でも紹介したように、時間外・休日労働が1か月に100時間超、2~6か月間の月平均で80時間超になると脳・心臓疾患の発症との関連が強くなることが医学的に確認されています。そのため、過労死などの問題が起こりやすくなる1つの目安として、月80時間の時間外・休日労働を「過労死ライン」と呼ぶことがあります。

なお、月80時間の時間外・休日労働というのは、週休2日制の場合なら、週の労働時間が計60時間、1日当たりの労働時間ですとおよそ12時間です。

過労死等の定義

平成26年6月に成立し、同年11月に施行された「過労死等防止対策推進法」では、「過労死等」を以下のように定義しています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患、もしくは心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • これらの脳血管疾患や心臓疾患、もしくは精神障害

労災の認定基準

労働者災害補償保険法は、業務災害や通勤災害に対し、必要な保険給付などを行う制度です。ただし、病気や障害が業務災害(業務上)と認定されるためには、労災の認定基準を満たさなければなりません。

たとえば、精神障害の場合、「業務上」と判断されるのは業務による心理的負荷の強度が「強」の場合に限られます。認定基準の「業務による心理的負荷評価表」をみると、発症前のおおむね6か月間に月80時間以上の時間外労働を行った場合の心理的負荷は「中」です。

36協定

36協定とは、時間外労働や休日労働に関する基準を定めた労使協定のことです。労働基準法第36条に規定されていることから、条文番号を使い「36(サブロク)協定」と呼んでいます。36協定は長時間労働と深い関連があるといわれますが、その理由を見ていきましょう。

事業者が労働者に時間外労働や休日労働をさせることは、労働時間を原則、1日8時間、1週40時間と定めた労働基準法に違反します。しかし、36協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に協定書を届け出ることにより、限度時間の範囲であれば時間外や休日に労働させることが可能となるのです。

サービス残業

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「仕事特性・個人特性と労働時間」の調査をみると、管理職を除く社員(非管理職)の1か月の残業時間は平均24.9時間でした。

 

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