「50代で転職すると年収は下がる?」
「現在の年収を維持したまま転職したい」
「50代からでも年収アップできる?」
50代で転職を考えるとき、仕事内容と同じくらい気になるのが転職後の年収ではないでしょうか。
住宅ローンや生活費、子どもの教育費、老後資金などを考えると、「転職したいけれど年収はできるだけ落としたくない」という方もいるでしょう。
結論からいうと、50代だから転職すれば必ず年収が下がるわけではありません。
一方で、年収を維持・アップできるかは、これまでの経験・専門性・役職・業界・転職先で求められる能力などによって大きく変わります。
この記事では、公的データも確認しながら、50代で年収を落とさず転職するための考え方と具体的な対策を解説します。
50代で転職すると年収は下がる?
まず「50代で転職すると必ず年収が下がる」という認識は正確ではありません。
厚生労働省の2024年上半期「雇用動向調査」では、転職入職者について前職と比べた賃金変動が調査されています。
50代を見ると以下のようになっています。
| 年齢 | 賃金が増加 | 変わらない | 賃金が減少 |
|---|---|---|---|
| 50~54歳 | 25.3% | 36.3% | 38.1% |
| 55~59歳 | 30.2% | 33.2% | 35.8% |
※厚生労働省「令和6年上半期雇用動向調査結果の概況」。転職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてのデータで、賃金変動状況不詳を含みます。
注目したいのは、50~54歳では「増加」と「変わらない」を合わせると約6割、55~59歳でも6割を超えていることです。
つまり、50代の転職=必ず年収ダウンではありません。
ただし、50~54歳では「減少」が38.1%、55~59歳でも35.8%なので、年収が下がるケースが決して少ないともいえません。
だからこそ、50代で年収を維持したい場合は、転職先の選び方が重要になります。
50代で年収を落とさず転職する7つの方法

1.「経験年数」ではなく「市場価値のある経験」を整理する
50代の転職では、
「営業を30年やってきました」
「管理職を15年間経験しました」
という経験年数だけでは、希望する年収につながるとは限りません。
企業側が評価するのは、その経験によって自社の課題を解決できるかどうかです。
例えば営業管理職なら、
- 担当した業界・顧客
- 売上実績
- 新規事業・新規開拓
- マネジメント人数
- 部下の育成
- 営業戦略の立案
- 組織改革
- 利益改善
などに分解します。
「部長経験10年」ではなく、
「20名の営業組織を管理し、○○という課題を○○によって改善した」
というところまで具体化します。
年収維持を狙うなら、企業がお金を払いたい能力を言語化することが重要です。
2.これまでの専門性を活かせる転職を優先する
年収を落としたくない50代の場合、完全未経験の仕事への転職は慎重に考えましょう。
未経験職では、これまでの経験・専門性をそのまま評価してもらえない可能性があるからです。
年収維持を優先するなら、
同業界 × 同職種
だけでなく、
異業界 × 同職種
も候補になります。
例えば、
製造業の経理
↓
IT企業の経理
メーカーの法人営業
↓
別業界の法人営業
というように、業界が変わっても専門能力を活かせる転職です。
50代では「新しいことに挑戦してはいけない」のではありません。
年収を優先するのか、キャリアチェンジを優先するのかを明確にすることが重要です。
3.マネジメントだけでなく専門性もアピールする
50代の管理職で注意したいのが、
「部長をしていました」
「課長として30人を管理していました」
だけで終わることです。
転職先によっては、管理職ポストの数が限られます。
そこで、
マネジメント能力+専門能力
の両方を整理しておきましょう。
例えば営業部長なら、
マネジメント
- 組織管理
- 人材育成
- 評価
- 予算管理
だけでなく、
専門能力
- 法人営業
- 新規開拓
- 営業戦略
- 顧客分析
- 商談
- 営業プロセス改善
などもあります。
「管理職でなければ価値がない」というキャリアにしないことが、求人の選択肢を広げるポイントです。
4.年収水準の高い業界・企業も比較する
同じ職種でも、業界や企業によって年収水準は異なります。
例えばJAC Recruitmentの転職実績データでも、50代の平均年収は業界によって大きな差があります。同社の利用者はハイクラス層に偏るため日本の50代全体の平均としては使えませんが、同じ50代でも所属する市場によって年収レンジが大きく異なることを見る参考にはなります。
そのため転職先を探す際は、
「現在と同じ会社規模・同じ業界」
だけで検索する必要はありません。
自分の経験を活かせる、
- 成長分野
- 高収益企業
- 専門性を必要としている企業
- 管理職・専門職求人
- 事業責任者クラスの求人
なども確認しましょう。
ただし「年収の高い業界に移れば必ず年収が上がる」という意味ではありません。
自分の経験がその業界で評価されることが前提です。
5.応募する前に「年収レンジ」を確認する
年収を落としたくないのであれば、求人選びの段階から確認が必要です。
求人票で、
- 想定年収
- 月給
- 賞与
- 固定残業代
- 各種手当
- インセンティブ
- 退職金
などを確認します。
例えば、
年収600万~900万円
と書かれているからといって、自動的に900万円で採用されるわけではありません。
経験・スキルなどによって提示額が決まる場合があります。
また、現在の「年収700万円」と転職先の「年収700万円」が同じ条件とも限りません。
6.基本給だけでなく「総年収」で比較する
転職時に注意したいポイントです。
例えば、
現在
- 基本給
- 賞与
- 役職手当
- 住宅手当
- 家族手当
などを含めて年収800万円だったとします。
転職先で月給が上がったとしても、
- 賞与が少ない
- 住宅手当がない
- 退職金がない
- 残業代の扱いが違う
などによって、実質的な待遇が変わる可能性があります。
JAC Recruitmentも、企業によって月収・賞与・手当などの水準が異なるため、現在の年収の詳細を確認しておくことが必要だと説明しています。
そのため、
月給だけでなく年間の総収入と福利厚生を比較する
ことが重要です。
7.内定後の年収交渉を適切に行う
企業から内定が出た段階で、条件を確認します。
ただし、
「現在800万円だから800万円以上ください」
という主張だけでは、企業側が納得するとは限りません。
重要なのは、
「なぜその年収に見合う価値を提供できるのか」
です。
例えば、
- 同業界で20年間の経験がある
- 求められている専門資格を持っている
- 同規模の組織をマネジメントした経験がある
- 企業が求める技術を持っている
- 類似プロジェクトの成功実績がある
など、採用企業が評価できる根拠を整理します。
年収交渉を行う場合も、求人の年収レンジや自分の市場価値を無視した金額を要求するのは避けましょう。
50代で年収が下がりやすい転職パターン
年収維持を優先するなら、次のような転職は慎重に判断しましょう。
完全未経験の職種へ転職する
これまでの経験を評価しにくい仕事では、経験者と同水準の給与にならない可能性があります。
未経験転職については、
の記事で詳しく解説しています。
前職の役職に対して給与が高かった場合
現在の給与が、
「会社での長い勤続年数」
「社内での昇進」
などによって上昇している場合、他社で同じ評価を受けられるとは限りません。
そこで重要になるのが転職市場での市場価値です。
年収だけを見て応募する
高年収求人だからといって、自分に適した転職先とは限りません。
年収1,000万円でも、
- 責任範囲が大きい
- 求められる成果が高い
- 転勤がある
- 勤務時間が変わる
など、現在と条件が異なる可能性があります。
年収だけでなく仕事内容も確認しましょう。
50代でも年収アップ転職は可能?
可能性はあります。
例えばリクルートエージェントの公式ページでは、50代・財務職で605万円から861万円へ転職した年収アップ事例が掲載されています。もちろん一事例であり、50代なら同様に年収アップできるという意味ではありません。
また、JAC Recruitmentが公表している50代のハイクラス転職事例にも、
650万円 → 900万円(設計部長)
850万円 → 1,000万円(データエンジニア)
800万円 → 900万円(人事部長)
など、年収アップした事例があります。一方で、年収が下がった転職事例も掲載されています。
ここから言えるのは、
「50代だから年収が下がる」のではなく、経験・専門性・転職するポジションなどによって結果が異なる
ということです。
年収800万円以上の50代は「ハイクラス転職」も検討する

現在の年収が比較的高い場合は、一般的な求人だけでなく、管理職・専門職・ハイクラス領域の求人も確認してみましょう。
特に、
- 管理職
- 経営企画
- 財務・経理
- 人事
- 法務
- ITエンジニア
- 技術職
- 営業責任者
- 事業責任者
- 高度専門職
などの経験がある場合です。
JAC Recruitmentの2023年1月~2025年10月の実績では、50歳で同社を利用して転職した人のうち、900万円以上の年収帯が約52%を占めています。
ただし、これは非常に重要な注意点があります。
JAC Recruitmentはハイクラス転職を中心とするサービスなので、この数字を「50代転職者全体の52%が900万円以上」と解釈してはいけません。
あくまで同社を利用して転職した人の実績です。
逆にいえば、すでに管理職・専門職などの経験があり、高い年収を維持したい50代なら、ハイクラス領域の求人も比較する価値があります。
50代の転職で「年収」と一緒に確認したい5つの条件
年収を維持することは重要ですが、50代ではその先の働き方まで考えましょう。
1.定年年齢
何歳まで正社員として働けるのか確認します。
2.再雇用制度
定年後の働き方や給与体系を確認します。
3.役職定年
入社後数年で役職定年になるのであれば、将来の年収にも影響する可能性があります。
4.退職金
現在の会社と転職先で制度が異なる場合があります。
5.福利厚生
住宅・家族関連の手当なども含めて比較します。
つまり50代では、
「入社初年度の年収」だけでなく「60歳以降まで含めた収入」
という視点を持つことも重要です。
「年収を落としたくない」なら退職前に市場価値を確認する
年収を維持したい50代に、特におすすめしたいのがこれです。
転職先を確認する前に会社を辞めないこと。
もちろん、現在の状況によっては先に退職する必要があるケースもあります。
しかし在職中に転職活動できるのであれば、まず、
- 現在の年収を正確に計算する
- 自分の経験・実績を整理する
- 同職種の求人を検索する
- 想定年収を確認する
- 転職エージェントなどでも求人を確認する
- 現在の会社に残る場合と比較する
という順番で考えます。
求人を見た結果、
「現在より年収が大幅に下がりそうなので転職しない」
という判断になっても問題ありません。
転職することが目的ではなく、今後のキャリアをより良くすることが目的だからです。
転職エージェントを使って年収相場を確認する方法もある

50代の場合、自分の市場価値を一人で判断するのは簡単ではありません。
そこで、転職エージェントを利用して求人を確認する方法があります。
サービスによって得意とする年収帯・職種・業界が異なるため、
幅広く求人を探す総合型
と、
管理職・専門職などを扱うハイクラス型
を比較する方法もあります。
ただし、転職エージェントが提示した年収や求人が必ず実現するわけではありません。
複数の求人を確認し、自分の経験がどの程度の年収帯で募集されているか判断する材料として活用しましょう。
50代の転職と年収についてよくある質問

50代で転職すると必ず年収は下がりますか?
必ず下がるわけではありません。
厚生労働省の2024年上半期調査では、50~54歳の転職入職者で賃金が「増加」した割合は25.3%、「変わらない」は36.3%でした。55~59歳では「増加」30.2%、「変わらない」33.2%です。
ただし、賃金が減少した人も50~54歳で38.1%、55~59歳で35.8%います。
50代で年収アップするには何が重要ですか?
企業から評価される専門性・実績・マネジメント経験などを明確にし、それを必要としている求人を探すことが重要です。
単純に年収の高い求人へ応募するのではなく、自分の経験とのマッチングを確認しましょう。
年収を維持するなら同業界に転職した方がいいですか?
必ずしも同業界である必要はありません。
異業界でも同じ職種・専門性を活かせる場合があります。
「業界」と「職種」を分けて考えると、求人の選択肢を広げられます。
50代で未経験転職すると年収は下がりますか?
必ず下がるとはいえませんが、これまでの経験を直接評価されにくい職種では、現在の年収を維持できない可能性があります。
年収維持を優先するのであれば、完全未経験だけでなく、これまでの経験を一部でも活かせる仕事も比較しましょう。
まとめ|50代で年収を落とさないためには「自分を高く評価する市場」を探す
50代だから転職すれば必ず年収が下がるわけではありません。
厚生労働省のデータでも、転職によって賃金が増えた50代、変わらなかった50代、減った50代のすべてが存在します。
参照先:厚生労働省
年収維持・アップを目指すために重要なのは、
- 市場価値のある経験・実績を整理する
- 専門性を活かせる求人を優先する
- マネジメント+専門能力をアピールする
- 業界・企業ごとの年収水準を比較する
- 応募前に想定年収を確認する
- 月給ではなく総年収・待遇で比較する
- 自分の市場価値を踏まえて条件交渉する
ことです。
そして50代で特に避けたいのが、自分の市場価値を確認しないまま退職してしまうことです。
現在の会社を辞める前に、自分と同じ職種・経験を求める求人がどの程度あり、どのくらいの年収が提示されているのか確認してみましょう。
「今の会社に残った方がいい」と判断できることも、転職活動によって得られる重要な答えの一つです。

